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朝の読書から家読へ

いじめ・不登校・学級崩壊・少年犯罪の増加など教育現場の危機とも言われていた80年代。この子どもたちの心の荒みに歯止めをかけ、夢や希望を語り合える生きる力を育む方法に何があるのか? 千葉県の私立女子高校の二人の教師が様々な試行錯誤を繰り返し、辿りついたのが「朝の読書」であった。 

 

1988年4月、子どもたちの主体性と公平性を尊重するために「みんなでやる」「毎日やる」「すきな本でよい」「ただ読むだけ」を原則にした「朝の読書」が千葉県船橋学園女子高等学校(現:東葉高等学校)でスタートした。 

 

 毎朝児童・生徒と教師の全員が10分間本を読む。一日10分間でも毎日続けることで子どもたちに様々な効果が現れた。「集中力がついた」「落ち着きが出てきた」「読解力がついた」「国語力がついた」などの他に、他人を思いやる気持ちが身に付き、「いじめが姿を消した」「不登校児がいなくなった」や「学級崩壊を立て直すことができた」など奇跡的な現象があらわれた学校もあった。 

 

「朝の読書」は全国の小中高校に広まり、子どもたちと学校経営に素晴らしい成果をもたらすことになった。しかし、子どもたちは学校では本に向かうが、家に帰ればまず読書はしない。家でも本を読む環境があれば子どもたちの知識や人生観、学力面でも大いに向上する事が望める、という議論から、「朝の読書」の家庭版はどうすればできるのか、という研究をすることになった。「朝の読書」は大人が考え出した読書活動なので、家庭読書は「朝の読書」に慣れ親しんでいる子どもたちから学ぶことになった。 

 

 この新しい読書運動をつくるという大きな課題にチャレンジしてくれたのが茨城県大子町の読書大好き小学生6人だった。「最近の大人は本を読まない」という厳しい指摘から「家読子ども会議」が熱っぽく展開され、その結果、「家族で同じ本を読もう!」「読んだ本で話そう!」「感想ノートをつくろう!」「自分のペースで読もう!」「家庭文庫をつくろう!」という「家読5つの約束」を原則にすることに話がまとまった。後日、この「家読子ども会議」の模様は読売新聞社と関係団体が企画して2006年12月20日付け読売新聞広告特集で全国へ発信することになった。これが「家読」運動の始まりである。

(文責:佐川二亮) 

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